子宮は女性の骨盤内にある臓器で、大きさは成人女性で鶏卵大程度です。
子宮は体部と子宮の入口にあたる頚部に分けられます。
目次
子宮がん検診とは
子宮がん検診は一般的に子宮頚部にできる子宮頚がんの検診を指します。
子宮頸がんの原因は
子宮頚がんは、20~30代の女性で発症が最も多いがんです。原因のほとんどは性交渉を介したヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染であり、日本人女性のHPV検出率は、10 歳代~20 歳代で最も高く、20%前後と報告されています。
ヒトパピローマウイルス(HPV)とは
ヒトパピローマウイルス(Human Papillomavirus、HPV)は、皮膚や粘膜の細胞に感染するDNAウイルスの一群です。HPVには100種類以上の異なる型が存在し、それぞれが異なる部位に感染することが知られています。HPVの感染は世界中で広く見られ、性的接触が最も一般的な感染経路の一つとされています。
主な特徴- 広範な型:
HPVには低リスク型と高リスク型があります。低リスク型は通常、性器や肛門周辺のイボ(尖圭コンジローマ)などの良性の病変を引き起こします。一方で、高リスク型HPVは子宮頸がん、肛門がん、咽頭がんなどの癌を引き起こす可能性があります。 - 性的接触による感染:
HPVは性的接触を通じて広く伝播しますが、それ以外にも直接的な皮膚の接触や、感染した表面からの非性的な伝播が可能です。 - 自然な免疫応答:
多くのHPV感染は無症状であり、免疫よって自然に排除されます。しかし、いくつかの感染は持続し、長期にわたって細胞異常を引き起こすことがあります。
HPVとがん
高リスク型HPVの持続的な感染は、子宮頸がんの主要なリスク因子です。特にHPV16型とHPV18型は、世界の子宮頸がんの大部分を占める原因とされています。また、これらのウイルスは、口腔がん、肛門がん、陰茎がん、および外陰部および腟がんのリスクを高めることが知られています。
HPVに感染すると
HPVに感染すると一部の方で子宮頚部の上皮細胞が異形成の状態になります。異形成とは、簡単に言うと正常とがん細胞の間の状態です。
CIN1(軽度異形成)→CIN2(中等度異形成)→CIN3(高度異形成)の3段階があります。異形成となった上皮細胞は時間が経つと一部が上皮内癌へ移行していき、子宮頸がんを発症します。早期発見による治療が有効であることから定期的な検診を受けることが重要です。
異形成と診断されたら
異形成が見つかったからといって、必ずしも子宮頸がんになってしまうわけではありません。異形成になっても、異形細胞が自然と消えてなくなることがあります。CIN1と診断された人の約60〜75%は、自然に消退していくとされています。
ただし、一部の方は子宮頸がんに移行していく方がみえますので、必ず定期的な検査を受けましょう。具体的には異形成と診断されたら3〜6ヶ月ごとに細胞診とコルポスコピー診を受けることをお薦めします。コルポスコピーとは膣の拡大鏡で、子宮頸部を拡大して観察して診断を行います。
子宮頸がんは性行為をしてから何年で発症するのか?
子宮頸がんの原因はほとんどがヒトパピローマウイルス(HPV)の感染により起こり、発症に至るまでの期間は、感染後の経過に人によって大きく異なります。
HPVに感染しても必ずしも子宮頸がんを発症するわけではありません。多くの感染が自然に治癒し、病気を引き起こさないこともあります。
子宮頸がんの発症期間に関するエビデンスは複数あり、研究によってはHPV感染後10年から20年の間でがんが発症するケースが一般的であるとされています。これは平均的な数字であり、個人差があることに注意が必要です。
子宮頸がん検診ってどんなことをするの?
子宮頸がん検診は、子宮の入口部分にあたる子宮頸部に発生するがんを早期に発見するための検査です。この検診は、子宮頸がんの予防と早期治療に非常に重要な役割を果たします。
1.問診
HPVワクチンの接種歴、最終月経、不正出血の有無、過去に検診を受けたことがあるか、妊娠・出産の経験などの聴取を行います。
2.内診
内診台に乗っていただき、専用の器具を膣から入れて、子宮頸部の状態を確認します。お腹を軽く押して、子宮や卵巣の状態も合わせて確認します。
3.細胞診
専用のブラシを使用して、子宮頸部の表面から細胞を優しく採取します。通常、痛みはほとんど感じません。
子宮がん検診の頻度
日本では、基本的に20歳以上の女性に対して、2年に1度の子宮頸がん検診の受診が推奨されています。しかし、個人のリスクや以前の検査結果に基づいて、医師の判断によりもう少し短い間隔での検診を薦めることがあります。
子宮頸がんワクチンについて
POINT子宮頸がんの予防にはワクチン接種が効果的です。
子宮頚がんはワクチン接種によって感染予防効果が期待できます。
現在、子宮頸がんワクチンは、
- サーバリックス®
- ガーダシル®
- シルガード9®
の3種類から、選ぶことができます。当院ではシルガード9®を推奨しております。
サーバリックス®とガーダシル®は、HPVの中でも子宮頸がんをおこしやすい種類(型)であるHPV16型と18型の感染を防ぐことができます。そのことにより、子宮頸がんの原因の50~70%を防ぎます。 シルガード9®は、HPV16型と18型に加え、31型、33型、45型、52型、58型の感染も防ぐため、子宮頸がんの原因の80~90%を防ぎます。
HPVワクチンは、合計2回または3回接種します。接種するワクチンや年齢によって、接種のタイミングや回数が異なります。
定期接種の対象者
- (1)小学校6年生~高校1年生相当の女子
(標準的な接種年齢は中学校1年生) - (2)平成9年4月2日~平成19年4月1日生まれで積極的勧奨の差し控えにより定期接種の機会を逃した女子(キャッチアップ接種)
子宮体がん
子宮体がんとは
子宮体がんは多くが子宮の内側の子宮内膜から発生する子宮内膜がんを指します。日本では年間約16,000人~17000人が子宮体がんと診断され、患者数は子宮頸がんより多く、患者年齢は40歳代以降から増加し、50~60歳代が最も多いです。
自覚症状は最も多いものが出血です。月経ではない期間や閉経後に出血(不正出血)がある場合は注意が必要です。出血の程度には、おりものに血が混ざり、褐色になるだけのものもあります。進行すると、下腹部の痛み、性交時の痛み、腰痛、下肢のむくみなどの症状が出ることもあります。
不正出血を引き起こす病気には子宮体がん以外にも感染症による炎症や月経異常、子宮筋腫などが挙げられます。いずれも不正出血がある場合は疾患の可能性があるため放置せず、子宮体がんやほかの病気であることも考慮して検査を受けるようにしましょう。
子宮体がんを早くみつけるためには
子宮がん検診は馴染みがあり、受けられたことがある方も多数おられると思いますが、一般的な子宮がん検診は子宮頸がんの検診であり、子宮体がんの有無を調べることはできません。そのため定期的に子宮がん検診を受けており、その検査で異常のない人でも、不正出血などの気になる症状がある場合は子宮体がん検査を受けるようにしましょう。
子宮体がんにおけるおりものの特徴
血性おりもの
子宮体がんでは、不正出血や血が混じったおりものが一般的な症状の一つです。特に閉経後に経血様のおりものが観察される場合、子宮体がんの可能性が高まります。
水様性おりもの
子宮体がんの進行に伴い、透明で水のようなおりものが増加することがあります。これは、がん組織が分泌する液体によるもので、量が多くなることがあります。
臭いの変化
進行したケースでは、感染の結果としておりものに悪臭が伴うこともありますが、これは比較的まれです。
子宮がん検診についてのQ&A
生理中でも受けられますか?
診断に必要な細胞数が十分に採取できない可能性がありますので、生理中の方は避けた方がよいでしょう
性交渉の経験がないのですが、受けられますか?
強い痛みや出血を伴う場合があります。また処女膜が破れてしまう可能性があります。
妊娠の可能性がある場合や妊娠中でも受けられますか?
切迫流産の可能性がありますので、受けることはできません。
出血することはありますか?
出血することはありますが、通常は数日で治まりますのでご安心ください。
万一、出血が続く際は当院へご連絡ください。
痛みはありますか?
子宮頚部から細胞をとるときにはほとんど痛みはありません。
ただし、お産の経験のない方や、閉経後の方は診察器具を使う際に、膣に軽い痛みを感じることがあります。
文責:東海内科・内視鏡クリニック岐阜各務原院 仙波 恵樹