尿蛋白陽性(尿たんぱく検査)

尿蛋白陽性(+)判定を受けた

健康診断や日常の尿検査で「尿蛋白陽性(+)」と判定された。

尿蛋白検査は、尿中に本来出てこないはずのタンパク質が含まれているかどうかを調べる検査で、腎臓の機能を反映する重要な指標のひとつです。

正常な腎臓では、血液をろ過するフィルターの役割を担う糸球体が、タンパク質のような大きな分子が尿に漏れ出るのを防いでいます。しかし、何らかの異常があると、このフィルター機能が損なわれ、尿中にタンパク質が漏れ出す「蛋白尿」が生じます。

尿蛋白は腎臓の病気が無い方でも陽性となることがあり、「生理的蛋白尿」といいます。

尿蛋白が生理的蛋白尿病的なものかを判断するためにも医療機関を受診しましょう。


生理的蛋白尿とは?

尿蛋白陽性=病気とは限らない

尿潜血が陽性と出たからといって、必ずしも病気があるとは限りません。
以下のような原因でも、一時的に蛋白が出ることがあります。

  • 激しい運動をした直後
  • 発熱や脱水があるとき
  • 情緒的ストレス(精神的な緊張)

  • 立ち仕事が多い場合や長時間の起立(起立性蛋白尿)

  • 女性の場合は月経中またはその直後
  • 軽い膀胱炎や一時的な腎機能の変化

このような場合、時間の経過とともに自然に陰性に戻ることもあります。

健康な方でも、一時的に尿中に蛋白が漏れ出ることがあり、これを「生理的蛋白尿」と呼びます。

特に若年層に見られる「起立性蛋白尿」は、日中活動中にのみ尿蛋白が検出され、朝一番の尿では陰性となる特徴があります。これは腎機能に明らかな異常がない場合がほとんどで、通常は経過観察で問題ありません。

医療機関を受診するタイミング

初期の腎障害は自覚症状がほとんどないため、指摘された段階での受診が重要です。腎臓病は早期に発見し、生活習慣の見直しや必要な治療を開始することで進行を防ぐことが可能です。


尿蛋白陽性(+)で考えられる原因と疾患

生理的蛋白尿が除外され、蛋白尿が持続的に検出される場合には、以下のような疾患の可能性を考える必要があります。

糸球体腎炎(IgA腎症など)

尿蛋白の持続的な陽性は、腎臓の糸球体と呼ばれる微細な血管の集合体に何らかの障害が生じている可能性を示唆します。その代表的な疾患の一つが「糸球体腎炎」です。

糸球体腎炎とは、糸球体に炎症や免疫異常が起こることによって、尿中にタンパク質や血液が漏れ出してしまう病態の総称です。原因としては自己免疫反応、感染症後の免疫反応、あるいは遺伝的要因などが挙げられます。

特に日本で多く見られるのが「IgA腎症」です。これは、体内で作られる免疫グロブリンA(IgA)が腎臓の糸球体に沈着し、慢性的な炎症を引き起こすことで、尿蛋白や尿潜血をきたします。初期には自覚症状がほとんどなく、健康診断で偶然に発見されることも少なくありません。

IgA腎症は、進行すると慢性腎臓病(CKD)や末期腎不全に至る可能性があるため、早期診断と長期的な経過観察が極めて重要です。治療には、食事療法(減塩・蛋白制限)、降圧薬(特にRA系薬剤)、ステロイド療法などが用いられ、病態の進行を抑えることを目的としています。

尿蛋白が持続している場合、特にIgA腎症のような慢性疾患を見逃さないためにも、専門的な評価とフォローアップが必要です。

糖尿病性腎症

糖尿病性腎症とは

糖尿病性腎症は、糖尿病の三大合併症の一つであり、進行すると慢性腎臓病(CKD)末期腎不全に至ることもある重大な疾患です。高血糖状態が長期間続くと、腎臓の糸球体が徐々に傷つき、血液をろ過する能力が低下していきます。その結果、尿中にタンパク質が漏れ出る「蛋白尿」となります。 初期段階では「微量アルブミン尿」として検出され、やがて持続的な蛋白尿、そして腎機能の低下(eGFRの低下)へと進行します。自覚症状が出るのはかなり進行してからであるため、定期的な尿検査と血液検査による早期発見が非常に重要です。

治療方法

治療の基本は、血糖コントロールの徹底と血圧管理です。とくにRA系薬剤(ACE阻害薬やARB)は、糸球体内圧の抑制と蛋白尿の減少に有効であり、糖尿病性腎症の進行を抑制する目的で広く用いられています。また、食事療法(減塩・蛋白制限)も重要な柱です。 糖尿病性腎症は、進行すると人工透析が必要になるリスクがあるため、早期からの介入が鍵となります。

高血圧性腎障害

高血圧性腎障害(Hypertensive Nephrosclerosis, 高血圧性腎硬化症)とは

高血圧性腎障害(Hypertensive Nephrosclerosis, 高血圧性腎硬化症)とは、長期間にわたる高血圧により腎臓の細い血管(細動脈)が障害され、腎機能が徐々に低下していく慢性腎臓病(CKD)の一つです。進行すると、腎不全(透析が必要な状態)につながる可能性があるため、早めの発見と治療が大切です。

治療方法

治療では、血圧をしっかり下げることが最も重要で、特に腎臓を保護する作用のある薬(ARBやACE阻害薬)を使うことが多くなります。あわせて、減塩・禁煙・体重管理などの生活改善も効果的です。

ネフローゼ症候群

ネフローゼ症候群とは

ネフローゼ症候群とは、腎臓のフィルター(糸球体)がうまく働かなくなり、大量のたんぱく質が尿に漏れ出してしまう病気です。 このため、体内のたんぱく質が減り、体に水分がたまりやすくなり、むくみ(浮腫)が起こったり、血液中のコレステロールが高くなるなどの症状が見られます。

主な症状
  • 顔や足のむくみ
  • 体重の急増
  • 尿の泡立ち
  • 疲れやすい
  • 重症化すると腹水・胸水がたまることも

全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病

膠原病(こうげんびょう)とは

膠原病(こうげんびょう)とは、体の免疫が自分自身の組織を攻撃してしまう自己免疫疾患の総称で、皮膚や関節だけでなく、腎臓など内臓にも炎症を起こすことがあります。その結果、腎臓の糸球体(しきゅうたい)と呼ばれるフィルターの役割を持つ部分が傷つき、尿の中にたんぱくが漏れ出す(尿たんぱく)ことがあります。 これは腎障害のサインであり、早期の検査と治療がとても重要です。

尿蛋白を引き起こす膠原病の例
  • 全身性エリテマトーデス(SLE)
  • 多発性筋炎・皮膚筋炎
  • シェーグレン症候群
  • 全身性強皮症(SSc)
  • 混合性結合組織病(MCTD)
  • 顕微鏡的多発血管炎(MPA)
  • 多発血管炎性肉芽腫症(GPA:旧ウェゲナー)
  • アレルギー性肉芽腫性血管炎(EGPA:旧チャーグ・ストラウス)
  • 抗リン脂質抗体症候群(APS)
  • ベーチェット病(稀に腎障害を伴うことがある)

尿蛋白陽性で必要な検査

尿蛋白の持続や量が多い場合、以下のような検査で原因の精査を行います。

尿定性・定量検査

試験紙法で陽性となった場合は、尿中のタンパク質量を数値として評価する「尿蛋白定量」検査を行います。1日尿を集めて測る「24時間尿蛋白定量」もあります。

尿中アルブミン測定(微量アルブミン尿)

早期の腎障害、とくに糖尿病性腎症の診断に有効です。微量アルブミン尿は、腎臓の初期の異常をとらえる重要な検査です。

尿沈渣検査
血球、円柱などの有無や形状を顕微鏡で確認します。炎症や出血の有無、腎臓からの成分かどうかを判断できます。
血液検査(腎機能・炎症マーカー)

血清クレアチニンやeGFR、BUNなどの腎機能指標に加えて、炎症の有無(CRPなど)を調べます。

腹部エコー(超音波)検査

腎臓の大きさや構造の異常、腫瘍、結石の有無を確認します。非侵襲的で痛みもなく、初期スクリーニングに適しています。

腎生検

血液検査などで原因がはっきりしない場合は腎臓を穿刺し、組織を採取することで病理検査を行い、原因をはっきりとさせることがあります。

 

尿蛋白と尿潜血が同時に陽性だったら

腎臓からのサインかもしれません

健康診断や尿検査で「尿蛋白と尿潜血が同時に陽性」と指摘された場合、腎臓の病気が隠れている可能性があります。

同時陽性のときに考えられる主な病気
  • 糸球体腎炎

腎臓の糸球体に炎症。若年でも多く、進行すると腎不全のリスクがあります。

  • 糖尿病性腎症

糖尿病による腎障害。糖尿病が悪い状態でおいておくと、腎障害を起こします。

  • 高血圧性腎障害

高血圧を治療せず長期間続くと腎臓にもダメージが蓄積されます。高血圧に伴う動脈硬化症は腎臓内の結果にもおよび、腎機能の悪化を引き起こします。

  • 腎盂腎炎

発熱や腰痛を伴う感染症。女性に多いです。

  • 膠原病(SLEなど)

自己免疫が原因で腎臓が障害されることがあります。

泌尿器科との連携

泌尿器科の疾患が原因のことも

尿潜血が指摘された場合、病状によっては泌尿器科が担当科となることもよくあります。
特に、膀胱・尿管・腎臓の構造異常や腫瘍、前立腺疾患などが疑われる場合には泌尿器科の精査が必要です。

腎臓内科での対応が適している場合

一方で、尿潜血に加えて「蛋白尿」が同時に認められる場合は、腎臓そのものに異常がある可能性があり、腎臓内科での評価が望まれます。

当院は内科を専門としていますが、尿潜血に関する相談や初期の診察などについて検査・相談に対応しております。

「どこに相談したらいいかわからない」「泌尿器科と腎臓内科のどちらに行けばよいか迷っている」

といった場合も、遠慮なくご相談ください。必要に応じて適切な医療機関へのご紹介も行っております。

お問い合わせ

お問い合わせ当院では、岐阜市、各務原市、岐南町を中心に尿蛋白検査陽性の方へ、検査を行っております。当院は内科を専門としたクリニックとして腎臓病、腎盂腎炎、膀胱炎などの診療を行っております。腎臓の数値が気になるなどのご相談があればお気軽に当院にご相談ください。水曜日の午前中には腎臓内科専門医の診療も行っております(日にちによっては不在の場合があります。腎臓内科専門医の診察を希望される際は事前に当院までご確認ください)。些細なことでもかまいませんので、なにか気になることがありましたらお気軽に当院へお越しください。


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当院では各務原市はもちろんですが、岐阜市、岐南町、関市、笠松町、羽島市、瑞穂市にお住いの方からも尿蛋白検査の精査を目的にご来院して頂いております。

当院は国道156号線沿いに位置しており、本巣市、山県市、美濃加茂市、美濃市、郡上市、一宮市、江南市、犬山市、扶桑町、大口町からのアクセスも良いため多くの患者様にご来院いただいております。

文責:東海内科・内視鏡クリニック岐阜各務原院 院長 神谷友康

参考文献:Webster AC, Nagler EV, Morton RL, Masson P. “Chronic Kidney Disease.” Lancet (London, England) 389, no. 10075 (2017): 1238-1252.

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    :内科外来 :婦人科外来 :内視鏡検査
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    上部内視鏡検査は診療日の午前中に毎日行っています。
    受付時間は診療時間終了15分前

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