下記のような方は食道がんに注意が必要です。
- 喫煙:「1日の本数×喫煙年数」の掛け算が400以上の方
- アルコールをよく摂取する:特にアルコール度数の高い酒を飲む
- アルコールですぐに顔が赤くなる
- 逆流性食道炎を繰り返している
目次
ATTENTIONこのような方は要注意
喫煙は食道がんのリスクになります。
喫煙は食道がんのリスクを著しく増加させます。研究によると、喫煙者は非喫煙者に比べて食道がんになるリスクが約2倍から3倍高くなると報告されています。
アルコールで顔が真っ赤になる人は要注意!!
アルコールで顔が真っ赤になることを「フラッシャー」といいます。
顔が真っ赤になる方はアルコールを分解する酵素であるアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)が少ない方です。アルコールを分解するとアセトアルデヒドという物質が産生され、この物質が強い発がん性を持っています。
アルコールフラッシャーの人がアルコールを多量に摂取すると食道がんのリスクが非常に高くなり、リスクは10倍以上にもなることが示されています。
逆流性食道炎を繰り返している
逆流性食道炎を繰り返している方はバレット食道といわれる状態になります。バレット食道とは、逆流性食道炎を繰り返した結果、食道の粘膜がバレット上皮という粘膜に変化してしまった状態です。バレット食道はSSBE(短い範囲)とLSBE(長い範囲)に分類されます。
バレット食道の問題点は発癌する可能性があることです。SSBEでは食道癌が発生する可能性は年間0.03%、LSBEの場合は年間0.22%とされています。少ないと感じるかもしれませんが、年間の確率ですので、10年間経過するとLSBEでは2.2%の確率で癌ができるということになります。
食道がんを疑う症状は?
下記のような症状がある場合は要注意です。
①飲み込みにくさ(嚥下困難)
食物や液体を飲み込む時に違和感や痛みを感じる症状です。これは食道がんのもっとも一般的な初期症状の一つで、食道の内部に腫瘍が形成されることで食道の通り道が狭くなるために起こります。
②体重減少
明確な理由なく体重が減少する場合、食道がんを含むさまざまながんの可能性があります。特に食事の摂取が困難になることで栄養状態が悪化し、体重減少が進むことがあります。
③胸痛または痛み
胸部の痛みや不快感、特に食事時に胸骨の後ろで感じる痛みは食道がんの症状であることがあります。
④持続する咳や声のかすれ
食道がんが気管や喉頭に近い場所で進行すると、咳や声のかすれといった症状が引き起こされることがあります。
食道がんの検査
食道がんの検査でもっとも重要な検査は胃カメラ検査です。 症状がある場合は胃カメラ検査を必ず受けましょう。
POINT食道がんは通常の白色光では病変を見落とす可能性が高くなります。
食道がんは扁平上皮という細胞が癌化したものです。扁平上皮はいくつもの層が重なってできる上皮で早期の食道がんでは色調にほとんど変化がない病変があります。
したがって早期の食道がんは通常の観察では見落とされやすいです。
食道がんを見落とさないための内視鏡検査ではNBIやBLIという青色領域の光を当てた検査が必須です。
左の画像は白色光での通常の内視鏡検査です。右はNBIという青色の光を当てた画像です。青色の光をあてることで癌が茶色い領域としてより鮮明となります。
当院では検査の際は必ず全員にBLIという青色の光を当てて、食道がんの有無をチェックしています。
食道がんの治療
がん治療の基本は早期発見・早期治療です。
特に食道がんの場合はもし手術になった場合はかなり負担の大きな手術となります。喉に近くに癌ができてしまうと声帯も一緒に切除することがあるので、声が出せなくなるなどの結果になってしまうこともあります。
1.内視鏡的治療
- 内視鏡的粘膜切除術 (EMR):
食道がんが小さく粘膜に限定されている場合に適応となります。スネアという器具を使ってがんのある部分の粘膜を直接切除します。 - 内視鏡的粘膜下層剥離術 (ESD):
食道がんが粘膜にとどまっている場合でより大きな食道がんの粘膜を一枚の層として切除します。
2.放射線療法
内視鏡治療で切除が困難なほど進行した食道がんは、放射線治療が選択されることがあります。放射線治療が適応となるのはがんが食道に限局している場合です。
3.外科手術
- 食道切除術:
遠隔転移がない食道がんの場合、食道の一部または大部分を取り除く手術が行われます。
4.化学療法
抗がん剤を用いてがん細胞を縮小させます。化学療法は、手術前後の補助療法として、または放射線療法と組み合わせて用いられることもあります。
よくある質問
食道がんの初期症状は?
食道がんの初期症状は嚥下困難(飲み込みにくさ)や喉がつかえるなどの症状が出現することが多いです。しかし、早期食道がんではほとんど無症状なことが多く、症状が現れた時には進行がんであったということも珍しくはありません。
食道がんが完治する確率は?
食道がんが完治する確率は進行具合によって大きく異なります。食道がんが食道内にとどまっており、転移などがない場合の5年生存率は80%程度です。しかし、遠隔転移といって遠くの臓器に転移がみられる場合の5年生存率は10%程度まで低下します。これは遠くに転移をしてしまうと10人中9人は5年以内に命を落としてしまうことになります。
早期発見をし、早期に治療を行うことができれば、食道がんも完治が見込める病気です。
文責:東海内科・内視鏡クリニック岐阜各務原院 院長 神谷友康