はじめに
ダイエットというと、厳しい食事制限や自己流の方法で苦労されている方も多いのではないでしょうか?
しかし、やみくもな制限や流行りの方法は、リバウンドや体調不良を招いてしまうことも少なくありません。
当院では、医師や管理栄養士の専門的な意見を取り入れながら、薬物療法を併用する「メディカルダイエット」を行っています。
ダイエットでは単に体重を落とすだけでなく、「健康的に、長く続けられる食事の工夫」が、重要になります。
このブログでは、メディカルダイエットにおける食事療法の考え方についてご紹介していきます。
理想的なダイエット
ダイエットは体の重さ(体重)だけに目を奪われてはいけません。理想的なダイエットとは今より余分な脂肪を減らし、筋肉量を維持もしくは増やすことであり、その上で自分の理想の体型まで体重を減らすことにあります。
筋肉量を増やすには運動が必須ですが、食事のとり方にも注意が必要です。ダイエット中も筋肉量を減らさないような食事の取り方を行うことが重要です。
◎食事制限といえば以下のイメージをお持ちではないでしょうか?
- ・とにかく絶食すれば痩せる。
- ・1日1食で我慢して生活しよう
- ・食べるのは低カロリーのダイエット食だけにする。
間違った食事の考え方では健康的に痩せることはできません。単純に食べる量をすべて制限するだけでは脂肪も減りますが、筋肉量も低下してしまいます。筋肉量の低下は基礎代謝(自分の身体が燃焼するカロリー)の低下を招き、ダイエットが成功してもリバウンドをしやすくなってしまいます。やみくもに食事制限を行うことは止め、ダイエット中もある程度のカロリー摂取をすることが重要です。
食事療法の始め方
自分の摂取しているカロリー数を把握しましょう!
POINT カロリー赤字を作る
週0.5~1.0kgの体重減少を目指すため、1日あたり500~750kcalのエネルギー赤字を作りましょう。カロリー赤字とは1日の摂取カロリー数(食べたカロリー数)より消費したカロリー数が多いことをいいます。(Hall et al., 2012)。
下図のように1日のカロリー摂取量が、消費カロリーを上回ると太っていき、その逆であれば痩せていくと考えられます。
1日の摂取カロリー数 > 総消費カロリー数 ⇒ 太る
1日の摂取カロリー数 < 総消費カロリー数 ⇒ 痩せる
自分が1日どれぐらいのカロリーを摂取しているかをノートなどの記載をし、1日の摂取カロリーを把握しましょう!
自分が1日どれぐらいカロリーを消費しているかを知る。
消費カロリー数は基礎代謝(まったく動かなくても消費するカロリー)と活動代謝量(運動で消費するカロリー)、運動代謝量に分けられます。
◎消費カロリー数 = 基礎代謝 + 活動代謝 + 運動代謝量
それぞれ計算して値を算出しますが、もう少し簡単にするとだいたい次の数値が成人の方の平均値です。(「中程度の活動」の場合)
◎日本人の平均的な総消費カロリー数(中程度の活動)
- 男性: 約2,500~2,600 kcal 女性: 約2,000~2,100 kcal
この総消費カロリー数から500kcal~750kcal程度少ない量を1日の摂取カロリーに設定するといいでしょう。
【ダイエット時に推奨される1日の摂取カロリー数】
- 男性: 約1,800~2,000 kcal 女性: 約1,300~1,600 kcal
食事療法の進め方 ~食事の内容に気を付けましょう~
ポイント 低糖質、高蛋白質、高ビタミン、高ミネラルが大事です。
高タンパク食や食物繊維が満腹感を高め、摂取カロリーを自然に減らす効果があります (Westerterp-Plantenga et al., 2009)。
◎炭水化物(糖質)
炭水化物(糖質)の摂取量を減らすことが重要です。
炭水化物を減らすことは短期的に低脂肪食よりも体重減少効果が高いことが示されています (Bazzano et al., 2014)。
糖質制限は、厳格な糖質制限では糖質摂取量を20~50g/日に制限しますが、メディカルダイエットなどの治療中の方は低血糖を引き起こす可能性がありますので、中程度の糖質制限(糖質摂取量を50~150g/日に制限)程度をお勧めしています。
◎炭水化物(糖質)を摂取するときはGI値に注目しましょう
炭水化物を摂取するときは低GI食品を優先して摂取しましょう。
GI(グリセミックインデックス)とは、炭水化物を含む食品が食後にどの程度血糖値を上昇させるかを数値化した指標です。基準となる食べ物(ブドウ糖や白パン)を100とし、それに対する食品の血糖値上昇の割合でスコアを決定します。
【GI値の分類】
〇高GI食品(70以上) (血糖値を急激に上昇させる食品)
白米(炊いたもの)、フランスパン(バゲット)、パスタ、ジャガイモ(マッシュポテト、ベイクドポテト)、スナック・甘味、クッキー、ケーキ、ドーナツ、チョコレート、飴、グミ、スイカ、パイナップル、果物ジュースなど
〇中GI食品(56~69)(血糖値を中程度に上昇させる食品)。
玄米パン、さといも、かぼちゃ(品種による)、全粒粉のパスタ、バナナ(熟したもの)、マンゴー、パパイヤ、レーズン、無脂肪ヨーグルト(加糖)、豆乳(加糖タイプ)
〇低GI食品(55以下)(血糖値の上昇が緩やかな食品) オススメ
玄米、全粒粉パン、雑穀米、オートミール、サツマイモ、ブロッコリー、リンゴ、オレンジ、グレープフルーツ、キウイ、洋ナシ、無糖ヨーグルト、チーズ、牛乳(低脂肪または無脂肪)、ダークチョコレート(カカオ70%以上)
◎タンパク質
減量中は、筋肉量を維持しながら脂肪を減らすために適切なタンパク質摂取が重要です。タンパク質は満腹感を高め、エネルギー消費を増加させる効果があるため、減量中に適した栄養素です。
【減量中のタンパク質摂取量の目安】
一般的な目安: 体重1kgあたり1.2~2.0g
(例) 体重60kgの場合、72~120g/日
高タンパク食は筋肉量を維持しやすく、減量の成功率を高めることが研究で示されています (Paddon-Jones et al., 2008)。
タンパク質を多く含む食品の例
- 動物性食品: 鶏むね肉、卵、魚(サーモン、マグロ)、赤身肉(牛や豚のヒレ肉)、ヨーグルト、カッテージチーズ
- 植物性食品: 豆腐、大豆、レンズ豆、ヒヨコ豆、ナッツ、全粒穀物
食品だけで摂取が難しい場合はプロテインなどの栄養食品も併用するといいでしょう。
タンパク質を体重1kgあたり1.2~2.0g摂取するのは量が多く大変ですが、まずは体重1kgあたり1.0g摂取をすることを目指しましょう。
以下は、体重60kgの日本人が1日の総タンパク質摂取量約60gを達成する献立例です。
【1日の献立例】
朝食・・・・合計タンパク質量: 約23.5g
焼き鮭(切り身1切れ、70g)、玄米ごはん(100g)、ほうれん草のお浸し(50g)、味噌汁(豆腐50gとわかめ入り)
昼食・・・・合計タンパク質量: 約30g
鶏むね肉の照り焼き(100g)、雑穀米(100g)、ブロッコリーのごま和え(100g)、ひじき煮(50g)
夕食・・・・合計タンパク質量: 約26.5g
豆腐ハンバーグ(豆腐100g + 鶏ひき肉50g)、玄米ごはん(100g)、小松菜としめじの炒め物(小松菜100g しめじ50g)、なめこの味噌汁(なめこ50g)
40歳以上の女性は骨粗しょう症に注意しましょう
ダイエット中は、食事制限によって栄養が偏ると骨密度が低下し、骨粗しょう症のリスクが高まることがあります。骨の健康を維持するためには、以下のポイントに注意しましょう。
◎十分なカルシウムとビタミンDを摂取する。
カルシウムは骨の主要な構成成分であり、不足すると骨密度が低下します。ダイエット中でも必要な量を摂取することが重要です。
推奨量(日本人の食事摂取基準):
成人女性: 650~800mg/日 成人男性: 700~800mg/日
【カルシウムを多く含む食品例】
乳製品
牛乳(200mlあたり約220mg)、ヨーグルト(100gあたり約120mg)、チーズ(プロセスチーズ1枚あたり約100mg)
小魚
ししゃも(3尾で約200mg)、煮干し(10gで約230mg)
豆類
豆腐(1丁で約150~300mg)、大豆製品(きな粉や豆乳)
野菜
小松菜(100gあたり約170mg)、チンゲンサイ(100gあたり約100mg)
◎適度な運動で骨の健康を維持。
骨の健康を維持し、骨密度を高めるためには、適度な運動が欠かせません。骨は運動による負荷や刺激を受けることで強くなり、骨粗しょう症や骨折のリスクを軽減します。
【骨の健康を支える運動の原則】
負荷を与える運動:骨は適度な衝撃や圧力に反応して強化されるため、体重をかける運動が重要です。
筋力の向上:筋力トレーニングは骨への負荷を増やし、骨密度を高めます。
バランス能力の強化:転倒防止のため、バランスを鍛える運動が骨折リスクを低減します。
まとめ
ダイエット時に推奨される1日の摂取カロリー数は、男性: 約1,800~2,000 kcal、女性: 約1,300~1,600 kcal程度です。
高たんぱく質、低糖質の食事を心がけましょう。糖質を摂取する際は低GI食品を選びましょう。
女性は骨粗しょう症にならないようにビタミンDの摂取やカルシウムの摂取を積極的に行いましょう。
お問い合わせ
東海内科・内視鏡クリニックではダイエット外来を行っております。
詳細はこちらもご覧ください。
参考文献
- Hall, K. D., et al. (2012). Quantification of the effect of energy imbalance on bodyweight.
- Bazzano, L. A., et al. (2014). Effects of low-carbohydrate and low-fat diets.
- Estruch, R., et al. (2013). Primary prevention of cardiovascular disease with a Mediterranean diet.
- Paddon-Jones, D., et al. (2008). Protein, weight management, and satiety.
- Zeevi, D., et al. (2015). Personalized nutrition by prediction of glycemic responses.